[『月刊住職』 2025年5月号より転載]
華厳教学の形成と展開 櫻井唯著 法藏館 8800円
華厳教学の黎明に関わる智儼の著作を検討し、唐代初期の仏教思想を考察。敦煌文献や日本伝来の寺院資料などに基づき、東アジア仏教の展開を論じる。
五井蘭洲著『承聖篇』翻刻・注釈 江戸時代の儒者による仏教批判 湯城吉信著 汲古書院 8800円
江戸中期の儒者が仏教をどのような点から批判したかが分かる史料を翻刻し注釈。原作者五井蘭洲の他の著述の仏教に関する記述を附録で巻末に収録。
終焉化する宗教 今枝法之著 晃洋書房 3300円
社会学者が諸宗教の現況を専門書などを元に考察した論文の集成。仏教では葬儀の多様化と変容。著者によれば宗教は世界的に溶解し衰退するという。
一九六八年と宗教 栗田英彦編 人文書院 5500円
大学闘争やパリ5月革命などが起こった西暦1968年を軸に近現代宗教史を検討し直す論考。社会運動が日本人の思想や新宗教も含む信仰に与えた影響などを8人の研究者が考察する。
旅するカミサマ、迎える人々 神野知恵著 大阪大学出版会 3630円
家々を廻り芸を演じる風習を民俗芸能研究者が調査。本州西部で旅を続ける伊勢大神楽を中心にフィールドワーク。獅子頭や楽器など所持品の解説も。
煩悩百八面相 梶哲也著 東本願寺出版 770円
インド仏教で煩悩を表す漏・火・毒・瞋恚・慢・疑・無明など12の用語を、仏弟子らのエピソードを交えて初期インド仏教研究者が平易に説明。今村風子によるカラー挿絵付き。文庫判。
はじめての大乗仏教 竹村牧男著 講談社 1320円
中国を経て日本で発展した大乗仏教の特質を仏教学者が解説。縁起や生死輪廻、菩提と涅槃などの基礎事項を唯識や華厳の論書に基づき紹介。修行や他力の今日的な意味も考える。新書判。
運命は自分がつくる 山田忍良著 スローウォーター 1650円
リタイア後に出家し真言宗総本山東寺で日曜法話する内容を収録した第3弾。「欲しくば勝ち取れ」「続ければ本物になる」と信者を鼓舞する39話。
禅の時代 栄西・夢窓・大灯・白隠 柳田聖山著 筑摩書房 1430円
鎌倉時代の栄西から江戸中期の白隠まで臨済禅の系譜をたどってその展開を見渡し解説。1967年初出書の文庫化。著者は臨済宗寺院出身の研究者。
落語家新米住職のここにしかない“超絶”説法術 新寺建立ドキュメント 露の団姫著 興山舎 1980円
本誌好評連載が単行本になりました。女性落語家が一念発起して伝統仏教寺院を創建し住職となった前代未聞のエピソード。笑いで仏法を伝えていくことを心がけ、気になる現代の問題や、笑っていられないことまでもネタにする全40話。
日本と世界の墓地埋葬法制 大石眞他編 信山社出版 4950円
お墓をめぐる法律上の現状と課題を8人の法律学者らが考察する。ヨーロッパ諸国などでの調査を踏まえて、日本の終活事情に即した対応を論じる。
列島縦断日本の墓 関根達人著 吉川弘文館 2420円
全国各地で撮影した中世・近世の墓約170件の写真をカラーで掲載し解説。暮石を建てないアイヌや琉球文化圏の例も提示して墓とは何かを考える。
私の同行二人 人生の四国遍路 黛まどか著 新潮社 1078円
生涯二度目の歩き遍路に出た俳人がその行程を綴る。亡父の供養と母親の健康祈願のため、人と出会い、アクシデントが起きても歩き続ける。新書判。
日本史至極の終活 加来耕三著 日本ジャーナル出版 1650円
織田信長、千利休、宮本武蔵ら歴史上の偉人23名の臨終を歴史家が紹介。大往生・悲壮・応報など5つのテーマで各人の生き方に人生流儀を学ぶ。
科学史家の宗教論ノート 村上陽一郎著 中央公論新社 1100円
宗教を信仰の営みと文化的な役割との両面から思索、科学者の立場から科学的合理性と宗教の関係にも言及。終章では著者自身の信仰も綴る。新書判。
現代「ますように」考 井上真史著 淡交社 1650円
「こわくてかわいい日本の民間信仰」を副題に、まじないや奇祭といった習俗を寺社などの現場に見に行きレポート。民俗学や怪談研究をベースに探求。
体感する仏像 村松哲文著 NHK出版 3300円
国宝・重文級の仏像約60件のカラー写真を大型A4判で収録。NHK番組の複数のテキストを再編集。撮り下ろしの珍しいアングルも多数掲載する。
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