[『月刊住職』 2024年1月号より転載]

ブッダという男 初期仏典を読みとく 清水俊史著 筑摩書房 968円
仏典から神話的装飾を取り除くことで歴史のブッダを発見したとする近現代の研究を気鋭の仏教学者が検証。文献から読みとれる実像を再構築し、ブッダの先駆性を明らかにする。新書判。



仏教の歴史 ジャン=ノエル・ロベール著 講談社 1650円
世界各地の言語で翻訳されて広まった仏教の変遷をフランスの東洋学者が解説する。特定の地域に偏らず全体を鳥瞰するスタンスが特徴。今枝由郎訳。



インドの存在論・認識論・因果論哲学 宮元啓一著 花伝社 2200円
インド思想史上の重要テーマを西洋哲学と対比させるなどしながら講義する「インド哲学教室」第3弾でシリーズ最終巻。仏教にも直結する自己の問題、因果関係、存在の有無を解説する。



新・善財童子求道の旅 森本公誠編著 朝日新聞出版 3520円
『華厳経』の「入法界品」で善財童子が道の達人たちを訪ねる様子を描いた「華厳五十五所絵巻」をカラーで掲載し、各場面を東大寺長老が解説する大型本。1998年刊行書の大幅改訂。



日本人の仏教史 五来重著 KADOKAWA 1584円
仏教伝来から明治の神仏分離までの日本仏教の歴史を民俗学者が解説。宗祖や教団の行跡よりも庶民信仰に着目して語る。1989年刊行書の文庫化。



お大師さまの「生老病死」学 苦難の先に救われる 池口惠觀著 セルバ出版 1650円
高野山真言宗住職が理趣経を解説。「恐れに向き合う勇気」「煩悩から逃げない」など現代人に届く言葉で綴る。



ビジネスシーンを生き抜くための仏教思考 松波龍源著 イースト・プレス 1760円
真言律宗僧侶がビジネスパーソンに向けて仏教を解説。現代人に役立つロジックとして諸行無常や空を説明し、他宗教や西洋哲学との比較も提示する。



親鸞聖人出家得度時の無常詠歌の謎 中路孝信著 法藏館 1650円
詠み人知らずの和歌「明日ありと思ふ心のあだ桜…」がなぜ親鸞九歳の作と伝わり定着したか。本願寺派住職の四半世紀にわたる検証をまとめた論考。



桃太郎のユーウツ 玄侑宗久著 朝日新聞出版 1980円
臨済宗妙心寺派住職で芥川賞作家による6編の小説を収録。除染作業員の鬱憤が爆発するまでを描く表題作のほか、著者が暮らす福島の震災後を反映しながらも希望を感じさせる作品集。



黄檗僧 光鑑元如 野村武男著 戎光祥出版 1760円
江戸時代初期の黄檗宗僧侶、光鑑元如が中興開山となった武蔵国多摩郡松連寺の歴史を郷土史料から掘り起こす。当時の黄檗宗の動向を追うと共に大名らが寺院の復興を行った目的にも迫る。



日蓮「闘う仏教者」の実像 松尾剛次著 中央公論新社 924円
鎌倉新仏教開祖の一人である日蓮の生涯と思想を解説。偽撰とされる史料にも目を配り、ライバル視した忍性との関係などにも論を進める。新書判。



鎌倉時代仏師列伝 山本勉・武笠朗著 吉川弘文館 2750円
作品が現存する鎌倉時代の仏師39人を仏像研究者2人がリレー形式で解説。運慶派・快慶派・院派・円派・善派・地方仏師の事績と作風を紹介。



運慶 六田知弘写真集 求龍堂 5940円
運慶と運慶工房によると考えられる仏像97点の写真集。仏教美術撮影を多く手掛ける写真家が抑えた色彩と大胆なトリミングで像の魅力を伝える。



決定版 仏画の見方 大原嘉豊著 淡交社 3850円
仏画を鑑賞する基礎知識として図像・様式・技法を学んだ上で、名作25点を紹介。所有したコレクターの逸話とともに作品の特徴を解説する大型本。



ビジュアルでわかる はじめての〈宗教〉入門 中村圭志著 河出書房新社 1672円
三大宗教とアジア諸宗教の歴史や教えを図像とともに分かりやすく紹介。「14歳の世渡り術」シリーズの宗教編。



宗教と科学のせめぎ合い 水谷周著 国書刊行会 3520円
信仰と知識が共に力を失いつつある現代に両者の再構築の可能性を探る。イスラムが専門の著者が行の実践として千日回峰行や十牛図にも言及する。



クィアの民俗学 辻本侑生ほか編著 実生社 2200円
性的マイノリティの問題を現代民俗学の立場から6人の研究者らが論じる。LGBTの駆け込み寺と呼ばれる性善寺の取り組みに一章を割り当てて紹介。



イラストでひもとく 仏像のフシギ 田中ひろみ著 小学館 1760円
仏像の種類・約束事・造形・魅力を絵と文で解説。イラストレーターらしい目の付け所でその見方を教示する。 『隔週刊古寺行こう』に連載の加筆。





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