[『月刊住職』 2022年10月号より転載]

禅の中世 仏教史の再構築 末木文美士著 臨川書店 3630円
日本仏教の諸相を研究してきた仏教学者が、近年の調査などを踏まえて中世仏教の新知見を示す。前半では従来の鎌倉新仏教の枠組みを見直し、後半は新資料に基づき禅宗史を再検討する。



[全訳]念処経 ブッダの瞑想法 宮元啓一著 花伝社 1650円
観と察とによって如実知見を目指す瞑想法を説く「念処経」をインド哲学者がパーリ語から現代語訳。関連する禅語を紹介したうえで、解説では本経がマインドフルネス瞑想の原型と説明。



仏教は心の悩みにどう答えるのか 坂井祐円編著 晃洋書房 2530円
カウンセリングなどの現場で仏教思想をどう活かせるかを、7人の実践者が体験に基づき綴る。執筆は編者のほかに千石真理・玉置妙憂・石川勇一・谷山洋三・井上ウィマラ・池田豊應。



梅原猛と仏教の思想 菅原潤著 法藏館 1980円
2019年に死去した仏教思想家の日本仏教理解を検証。古代史から鎌倉仏教の祖師の研究まで、和辻哲郎への批判や上山春平との共同作業などをたどりながら、その長所と短所を論じる。



秘密事相 その原理と実践 池口恵観著 高野山出版社 2750円
密教の加持祈祷について解説。高野山真言宗宿老が自身の経験や恩師から受けた指導に基づき、目に見えない世界や神秘の力をわかりやすくひもとく。



空海に秘められた古寺の謎 山折哲雄編 ウェッジ 1430円
真言密教を完成した弘法大師空海の生涯を辿り、高野山ほかゆかりの寺院を紹介。四国遍路の歴史も解説。編者が前書きを寄せ、本文執筆は古川順弘。



歎異抄手帳 五木寛之訳 東京書籍 1650円
親鸞の教えに造詣が深い作家による現代語訳に版画家五木玲子の作品を添えた『私訳歎異抄』をポケットサイズに改装。宗教学者釈徹宗の解説を追加。



構築された仏教思想 蓮如 佐々木隆晃著 佼成出版社 1760円
本願寺教団を拡大させた蓮如の思想に、伝道教化で書き与えた「御文章」から分け入る。宗祖の教えの継承や、一遍の影響にも言及。当シリーズでは親鸞と妙好人に続く浄土真宗3冊目。



学佛 仏の大悲心を学ぶ 直林不退著 永田文昌堂 1650円
仏教学者の浄土真宗本願寺派住職が雑誌に寄稿した仏教解説や新聞のコラムを再編集。浄土真宗の歴史をたどると共に自身が受けた仏縁を振り返る。



オギャーでいいのだ 西村宗斎著 西日本新聞社 1540円
「はなたれ和尚の好日法談」と副題の付く臨済宗大徳寺派住職の遺稿集。茶道を縁に得度した経緯を語るインタビューや布教師としての法話の文字起こしなどを生前の主治医ら縁者が編集。



沙羅の咲く庭 こころの妙薬 飯塚大幸著 紅書房 1650円
臨済宗妙心寺派住職が寺報や地元紙に寄せたエッセイの集成。時事的な話題や自身の体験談など切り口を変化させながら説法に仕立て上げた74編。



日蓮遺文の思想的研究 大平宏龍著 東方出版 8800円
『観心本尊抄』ほか日蓮遺文に関する論文や講演録など20編を収録。まだ定説をみない問題にも法華宗本門流住職の研究者が長きにわたる考察を披歴。



寺社焼き討ち 稙田誠著 戎光祥出版 1980円
信心深い中世の人々がなぜ寺社という聖域に火を放つ行為を繰り返してきたのか。500年にわたる事例を分析し、冒涜の真意や正当化の方便を考える。



統一教会 櫻井義秀・中西尋子著 北海道大学出版会 5940円
霊感商法で社会問題を引き起こしてきた統一教会について信者らの聞き取りや訴訟資料を元に分析した研究書。2010年刊行書に加筆して緊急重版。



私たちはまだマインドフルネスに出会っていない 杉浦義典・井上ウィマラ著 日本評論社 2640円
マインドフルネスを軸に心理学と仏教瞑想の立場から集中・自己・子育て・いのちなどをテーマに意見を交わす。



運慶 鎌倉幕府と三浦一族 吉川弘文館 2200円
横須賀美術館と神奈川県立金沢文庫を巡回している展覧会の公式図録。運慶とその工房が東国で制作した仏像を紹介し、鎌倉武士の信仰を考察する。



はじめての利他学 若松英輔著 NHK出版 737円
最澄・空海・道元ら利他の実践者たちの言葉を引き、儒教の仁やキリスト教の愛を参照しつつ、他者とのつながりを考える。「学びのきほん」シリーズ。



流れが見えてくる宗教史図鑑 中村圭志監修 ナツメ社 1980円
世界の宗教の創始から現代の姿までをイラスト付きで解説。仏教の章では釈迦の生涯や大乗と上座部の違い、輪廻や空など。日本仏教は別の章で詳述。





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