[『月刊住職』 2022年4月号より転載]

琉球沖縄仏教史 知名定寛著 榕樹書林 4950円
研究の少ない琉球仏教の通史。統一王朝が成立した15世紀の仏教王国の出現から薩摩藩の侵攻による影響、近世以降の保護と受難、各宗派の進出など、盛衰を繰り返す歴史を概観する。



武州髙尾山信仰の地域的展開 外山徹著 岩田書院 5500円
東京西部の髙尾山にある真言宗智山派薬王院を中心とする信仰の歴史を考察。江戸時代前後の史料を分析して地元多摩郡から周辺地域への展開を探る。



真宗と現代葬儀 蒲池勢至著 法藏館 1430円
葬儀事情の急激な変化を民俗学者としての研究と大谷派僧侶の実践から整理。とくに真宗の教義に関わる問題に注目する。家族葬には理解を示しつつも、死を閉ざしてはいけないと訴える。



病災害の中のしあわせ 西本照真ほか編 武蔵野大学出版会 1980円
新設された武蔵野大学しあわせ研究所の研究員がコロナ禍の生き方を模索する論集。「仏教と疫病の歴史」「ブッダの言葉に見る老病死」などをテーマとする10章とディスカッションを収録。



寺社と社会の接点 菊地大樹・近藤祐介編 高志書院 5500円
鎌倉・室町時代の社会の実態を畿内ではなく関東や東北の寺社を手がかりとして考察。9人の歴史学者が古文書や石塔、板碑、仏像などから論じる。



日蓮に学ぶレジリエンス 平岡聡著 大法輪閣 1980円
受難の連続だった日蓮の生き方に、苦から回復する能力を学ぶ。日蓮を支えたのは法華経の行者であるとの自覚と、代受苦という菩薩の精神だったと仏教学者で浄土宗僧侶の著者は述べる。



維摩経 空と慈悲の物語 釈徹宗著 NHK出版 1100円
維摩経の構成とポイントを概説し、「二項対立のワナに気をつけろ」という現代的メッセージを読み取る。テレビ番組「100分de名著」のテキスト全4章に、新たに空思想の解説を加筆。



日本仏教史入門 松尾剛次著 平凡社 946円
素朴な疑問に答える形で仏教公伝から仏教系新宗教の台頭まで解説。叡尊や忍性の実践が近年の僧侶の救済活動につながっていると看破する。新書判。



ことのは 日蓮の手紙 木村中一著 平凡社 2860円
日蓮が弟子や信徒の悩みや苦しみに答えた手紙を掲載。研究者で日蓮宗住職による現代語訳を並べて用語解説を付ける。併載する評伝とあいまって仏教者日蓮の慈悲深さが浮かび上がる。



だれでも自由に使える マンガde仏教111キーワード 佐々木正祥著 興山舎 1760円
本誌別冊好評連載が単行本になりました。保護司で福祉活動家の住職による絵と文のひとコマ漫画説法。日常語になった仏教語から最新の流行語まで111作品は誰でも自由無償で利用可能です。



最澄に秘められた古寺の謎 山折哲雄編 ウェッジ 1430円
最澄の生涯とその教えを解説。徳一との論争や空海との決別を思想面から辿ることで天台教学の構造を明らかにする。後継者や関係寺院の紹介もある。



ボン教 弱者を生き抜くチベットの知恵 熊谷誠慈編 創元社 2530円
チベットの土着宗教で仏教的要素を受容しながら発展してきたボン教の概説書。その歴史や瞑想実践などを紹介して、現代人が学ぶべき柔軟性を提示する。



命とこの世の真理「般若心経」を解く 稲垣栄洋著 コスミック出版 1650円
生物学者による般若心経の現代語訳と解釈。素粒子や相対性理論など科学的アプローチで仏教の真髄に迫る。宇宙や自然の写真が経典の世界に彩りを添える。



いつか死ぬ、それまで生きる わたしのお経 伊藤比呂美著 朝日新聞出版 1980円
親族の死を経験した詩人が仏典を自由なスタイルで現代語訳。訳文の前後に生老病死をめぐるエッセイが挿入され、著者による経典朗読CDが付く。



人間と宗教あるいは日本人の心の基軸 寺島実郎著 岩波書店 2200円
商社勤めの必要に応じて学んできた中東一神教の理解と日本人の精神性についての考察の集成。仏教ではブッダや親鸞・日蓮・鈴木大拙などに言及。



9つの人生 ウィリアム・ダルリンプル著 集英社 1760円
現代のインドで宗教や伝統芸能に身を捧げる9人へのインタビュー集。入隊させられた仏教僧は戦闘の間も祈り続けたと苦しい胸の内を語る。新書判。



朱より赤く 高岡智照尼の生涯 窪美澄著 小学館 1760円
明治生まれの実在の尼僧の前半生を元にした小説。芸妓として身勝手な男たちに振り回された末に38歳で出家するまでの波瀾万丈を一人称で綴る。





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