[『月刊住職』 2022年3月号より転載]
禅についての十五章 孫昌武著 東方書店 7700円
現代中国の宗教学者の著書『禅宗十五講』の日本語訳。中国の禅宗がどのような社会的・文化的背景のもとで発展し衰退していったか時代を追って講義する。訳者は花園大学衣川賢次教授。
ウイグルの地の弥勒信仰 萩田麗子著・訳 集広舎 4620円
60年前に発見された古ウイグル語の写本『弥勒との邂逅』の日本語訳と解説。付録に弥勒に関する仏典の訳も掲載。著者はウイグル語古典詩研究者。
戦後日本の宗教者平和運動 大谷栄一編 ナカニシヤ出版 3960円
仏教、キリスト教、新宗教の諸団体が過去の戦争協力への反省から取り組んできた平和活動の展開をたどる論集。真宗者の反靖国運動と日蓮宗僧侶中濃教篤の紹介にそれぞれ一章を設ける。
老いと死をめぐる現代の習俗 佐々木陽子著 勁草書房 7480円
棄老・ぽっくり信仰・お供え・墓参りの習俗をテーマに、日本人が「あの世」をどう捉えているかを探る。聞き取り調査に基づく社会学者の学術論文。
諸宗教の歩み 谷口静浩著 晃洋書房 2420円
世界の主要な宗教の成り立ちと展開を宗教哲学研究者が概説。古代宗教、ユダヤ教、キリスト教、イスラーム、仏教、日本の宗教を一人で担当することで、宗教間の関わりが見えてくる。
死者と霊性の哲学 末木文美士著 朝日新聞出版 979円
他者をめぐる問題を仏教学者が考察。死者や神仏もまた他者として、大乗仏教をはじめ西洋哲学や江戸時代の思想のほか、19世紀に創始した神智学も駆使して他者理解の道を探る。新書判。
新・蔵王権現入門 総本山金峯山寺編 国書刊行会 1650円
金峯山寺本尊蔵王権現のご利益や拝み方をレクチャー。同寺のある吉野の歴史や修験道の信仰についても解説。12年前に発行した旧版を改訂し再刊。
正しい絶望のすすめ 西原祐治著 本願寺出版社 1320円
本願寺派住職が経典の一節などを身近な話題に引き寄せて浄土真宗の教えを解説する。正しい絶望とは希望への執着から自由になる、他力へのお任せ。
行基の喜光寺1300年 山田法胤著 京阪奈情報教育出版 1430円
薬師寺長老が住職を務める法相宗喜光寺の歴史を語る。荒れていた同寺をいろは写経勧進で復興してきた日々を回顧し、ゆかりのある行基を顕彰する。
なんとなく、仏教 木村文輝著 大法輪閣 1650円
大学教授で曹洞宗住職による仏教をめぐる講演の筆録。日本文化やいのちの尊厳について平易に語る。「なんとなく」は日本人の仏教観の肯定的表現。
仏師から見た日本仏像史 江里康慧著 ミネルヴァ書房 3080円
数多くの仏像を制作してきた著者が日本の仏像の歴史を解説。黎明期から頂点の仏師定朝に至りさらなる高みに達した運慶・快慶へとたどる。用材や技法など専門的な話題はコラムに綴る。
日本像の起源 伊藤聡著 KADOKAWA 2640円
自国の固有性は外来文化との対比で意識される。前近代の日本人が中国やインドの思想や文字にふれて見いだした「日本的なるもの」の変遷をたどる。
石山合戦を読み直す 塩谷菊美著 法藏館 2200円
民衆が立ち上がった一向一揆や石山本願寺での合戦は後世の軍記の虚構だったのか。史料を丹念に読み解き、あえて描いた意図から歴史の実像に迫る。
カルピスをつくった男三島海雲 山川徹著 小学館 858円
浄土真宗本願寺派僧侶で日本初の乳酸菌飲料カルピスの生みの親である三島海雲の評伝。原点はモンゴルの乳製品。晩年には聖典の刊行も。文庫判。
四天王寺の鷹 谷川健一著 河出書房新社 1078円
和宗四天王寺では蘇我氏に敗れた物部氏を祀り聖霊会にも登場させる。この謎を追う民俗学者の筆は奈良や宇佐へと古代世界を駆けめぐる。文庫判。
四国辺土 幻の草遍路と路地巡礼 上原善広著 KADOKAWA 1980円
同和問題に取り組む作家が四国遍路で生活する人々をルポ。伝説の巡礼者の足跡を追い、遍路のセーフティネットとしての機能を目の当たりにする。
かざる日本 橋本麻里著 岩波書店 2860円
現代の匠を訪ねて飾りの文化を見つめ直す。装身具や化粧をはじめ茶道や伝統行事の香りや音まで俎上に載せる。仏教との関わりでは料紙や表装を解析。
偉人の花ことば 杉原梨江子著 説話社 1540円
歴史上の人物や芸術家など約百人の花にまつわる名言を集めて解説する。仏教者は西行、一遍、良寛、九条武子、金子みすゞ、柳宗悦、坂村真民ほか。
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