[『月刊住職』 2021年11月号より転載]

甦る法隆寺 考古学が明かす再建の謎 菅谷文則著 柳原出版 5500円
令和元年に死去した考古学者の遺稿。法隆寺と聖徳太子との関係や伽藍の再建・非再建論争を、境内の発掘調査に携わってきた立場から懇切に解説する。



死者の力 津波被災地「霊的体験」の死生学 高橋原・堀江宗正編著 岩波書店 2640円
東日本大震災による犠牲者の周辺で起こった霊をめぐる体験の調査研究書。宗教学者が現地で聞き取りをして分析し、伝統宗教の儀礼の力にも注目する。



浄土の哲学 守中高明著 河出書房新社 3025円
浄土宗住職の哲学研究者が日本浄土教の祖である法然・親鸞・一遍の思想を西洋のニーチェやスピノザと重ねて現代に有効な教えとして提示する。前作『他力の哲学』をコロナ禍にて深化。



仏教は宇宙をどう見たか アビダルマ仏教の科学的世界観 佐々木閑著 化学同人 990円
説一切有部の『倶舎論』を一般向けに解説する。物質、精神、時間、因果などを徹底的に分析した哲学体系に仏教と科学との接点を見いだす。文庫判。



私が生まれてきた訳は 青木馨著 法藏館 2200円
両手両足を失いながら念仏信仰に生きた中村久子の生涯を手紙や短歌などを通じて紹介。付属のCDには久子の肉声による真宗大谷派蓮成寺本堂における法話を収録。著者は同寺の現住職。



お寺の掲示板 諸法無我 江田智昭著 新潮社 1100円
門前の掲示板を紹介するシリーズ第二弾。傑作約40件をカラー写真で掲載。寸言のインパクトや手書き文字の味わいなど目を引く理由を分析する解説文から掲示板伝道のコツを学べる。



タイの僧院にて[新版] 青木保著 青土社 2420円
文化人類学者が自らバンコクで出家し上座部寺院で半年間の修行生活を実践した記録が半世紀を経て復刊。戒律や托鉢など二千年以上続く僧伽の営みを伝える描写は今なお臨場感がある。



高野祈りみち 町石道をゆく 山中典朝著 東京図書出版 1980円
鎌倉時代に高野山へ登る参詣道に道しるべとして一町=約109㍍ごとに建てられた町石の、現存する219基のカラー写真と刻まれた銘文を掲載。



カラー版 地獄絵の日本史 末木文美士ほか著 宝島社 1320円
十王・六道輪廻・八大地獄など日本人が受け止めてきた死後世界の光景を文化財の絵図で紹介し、死への恐怖を和らげる信仰の力を読み解く。新書判。



鬼と異形の民俗学 飯倉義之監修 ウェッジ 1540円
天狗や鬼など災いをもたらすモノノケたちの系譜と聖地を解説し、怪異に立ち向かった陰陽師や密教僧を紹介する。漫画『鬼滅の刃』にも随所で言及。



日本の感性と東洋の叡智 中村順一著 淡交社 1980円
ベルギー大使を務めた元外交官がグローバルな視点でわが国の文化を語る。円覚寺での参禅経験などを踏まえて衣食住や和の心、環境問題にも展開する。



自分探しの倫理学 山内志朗著 トランスビュー 2090円
私とは何かという古くて新しい課題を気鋭の哲学研究者が縦横に語る。西洋思想を中心としながら底流には道元の「自己を忘るるなり」が流れ続ける。



聖徳太子と蘇我入鹿 海音寺潮五郎著 作品社 2090円
聖徳太子の1400年遠忌を記念して、歴史作家による遺作長編『聖徳太子』と、同じく『悪人列伝』シリーズから「蘇我入鹿」を加えた古代史小説集。



龍華記 澤田瞳子著 KADOKAWA 770円
平家による南都焼討ののち興福寺などの寺々が復興を目指すさまを描く歴史小説。「怨みを捨てる」という原始仏教以来のテーマが根底を貫く。文庫判。



教養としての茶道 竹田理絵著 自由国民社 1650円
外国人に質問され説明できることを目標とする茶道入門。細かい作法よりも、相手を思いやる心などの精神的側面を主に解説。掛け軸の禅語の解説も。



日本の世界文化遺産 写真が語る日 本の歴史 クレヴィス 2200円
現在20ある国内の世界文化遺産を著名な写真家17人の作品と簡明な解説でたどる。京都と奈良の寺社の撮影は土門拳、入江泰吉、水野克比古ほか。



世界の巨像図鑑 地球の歩き方編集室編 学研プラス 1760円
海外観光ガイドの番外編として一度は訪れたい名像140体を紹介。アメリカ自由の女神像、中国の楽山大仏の他、日本は牛久大仏や仙台大観音など。



阿・吽 第14巻 おかざき真里著 小学館 750円
最澄と空海の交流を描く長編漫画の完結巻。二人の天才は時代に翻弄され別々の道へ…史実を下敷きに対照的な両者の生涯を圧倒的な画力で描き切る。





Copyright (C) 2006-2021 kohzansha. All Rights Reserved.