[『月刊住職』 2021年9月号より転載]

全訳六度集経 六度集経研究会訳 法藏館 3850円
仏の本生譚全91話を六波羅蜜で分類した漢訳経典を全編初めて現代語訳。捨身飼虎など中国と日本の説話文学にも引用されてきた重要な経典。訳者は名古屋大学関係の研究グループ。



仏典とマインドフルネス 蓑輪顕量編 臨川書店 2970円
仏教の止観に由来するマインドフルネス瞑想を仏教学・心理学・脳科学の研究者17人が論じる。とくに煩悩などマイナスの反応に対する実践を考察。



寺録に見る寺院の歴史 元浄公昭著 永田文昌堂 660円
山口県の浄土真宗本願寺派の一寺院が記録してきた江戸時代末期から昭和半ばまでの寺史を掲載。近代史の中でもコレラ禍、空襲、戦没者追悼などを詳述。宗教社会学者の新田光子監修。



宗教の本性 誰が「私」を救うのか 佐々木閑著 NHK出版 968円
テレビの仏教解説でおなじみの研究者が宗教とは何かという大テーマに挑む。客観的な定義に始まり、視点を我が身に移して掘り下げてゆく。新書判。



おうちで禅 花岡博芳著 春陽堂書店 1980円
高僧の名言から映画のワンシーンまで多彩な切り口で、禅の心を暮らしに生かすコツを説くエッセイ集。断捨離を後悔するなど臨済宗妙心寺派住職の気取らぬ日常の実践に親しみが湧く。



ありがとう。また逢えるよね。 横田晴正著 双葉社 1540円
ペットロス問題に取り組む曹洞宗僧侶が、愛玩動物を失った悲しみの処し方を仏教の立場から伝える。具体的な供養についても助言。ペット依存度が高まる中で8年前の刊行書を増補改訂。



不要不急 苦境と向き合う仏教の智慧 新潮社 858円
コロナ自粛下で本当に大切なものは何かを十人の僧侶が説く。寄稿者は横田南嶺・細川晋輔・藤田一照・阿純章・ネルケ無方・露の団姫・松島靖朗・白川密成・松本紹圭・南直哉。新書判。



『鬼滅の刃』で学ぶはじめての仏教 松﨑智海著 PHP研究所 1463円
人気漫画を分析してその仏教的要素を解説。原作に親しんだ人は仏教がより身近になると同時に、仏教者が本作品のどこに惹かれるのかが見て取れる。



マンダラを生きる 正木晃著 KADOKAWA 1100円
密教で用いる複雑で難解な曼荼羅の意味や目的をやさしく解説。日本独自の展開をたどった上で、現代人がマンダラを生かす方法を示す。NHK宗教番組テキストに大幅加筆して文庫化。



密教仏神印明・象徴大全 藤巻一保著 太玄社 3278円
諸尊のシンボルを整理した事典。イラストを交えて如来・菩薩・明王・天部の神仏それぞれの姿、働き、手印、真言、三昧耶形、種字が一目でわかる。



お坊さんが教えるおうち修行 海竜社 1540円
各宗派8名の僧侶などでつくる「お寺ステイ」の面々が坐禅・写経など仏道修行を自宅で行えるように紹介。後半は書き込み式7日間実践プログラム。



親鸞を生きる ひろさちや著 佼成出版社 1650円
非僧非俗に生きた親鸞の信心一筋の生涯をたどり、その生き方から我々が何を学ぶかを問いかける。書き下ろし祖師を生きるシリーズ全8冊の第1弾。



『一遍聖絵』の世界 五味文彦著 吉川弘文館 2200円
時宗開祖一遍の生涯を描いた国宝絵巻の主要場面をカラーで掲げて鑑賞。宗教・美術・文学・民俗など多角的見地から人物配置や自然描写を読み解く。



運慶と快慶。 ペン編集部編 CCCメディアハウス 1980円
鎌倉時代前後に活躍した慶派仏師の作品をカラー写真で掲載してその作風の違いを解説する。仏像に造詣が深い著名人9名がお気に入りの一体を披露。



共に社会を生きる人間 中山康雄著 勁草書房 3520円
ソクラテスからフロイトまでの西洋哲学をもとに私たちはどう生きればいいかのモデルを思索。大乗仏教でも重要な共生という実践を中心に考察する。



疫病の精神史 竹下節子著 筑摩書房 902円
キリスト教社会における疫病流行の歴史をたどる。聖書に描かれる病や聖職者の衛生観念、宗教儀礼の感染対策がコロナ禍と重なって映る。新書判。



死者の告白30人に憑依された女性の記録 奥野修司著 講談社 1760円
一人の女性に憑いた霊たちの苦痛の叫びを書き留めた現代版『遠野物語』。そのつど現実に引き戻してくれる除霊担当の曹洞宗住職の存在が頼もしい。



怪談和尚 森野達弥作画 文藝春秋 990円
京都・日蓮宗蓮久寺の三木大雲住職による怪談話のコミック本。お寺に持ち込まれる不思議な相談事から厳選した11話。「怖いのに泣ける」らしい。





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