[『月刊住職』 2021年5月号より転載]

村上専精と日本近代仏教 オリオン・クラウタウ編 法藏館 6380円
真宗大谷派僧侶にして東京帝大印度哲学科初代教授でありながらいまだ評価の定まっていない村上専精の思想と生涯を研究者らが多角的に考察する。直筆資料翻刻・著作目録・年譜付き。



神仏融合の東アジア史 吉田一彦編 名古屋大学出版会 7920円
神と仏が融け合う現象は日本だけではなくアジア諸国で広く見られる。各地域の専門家がその実態を整理した上で改めて日本の神仏習合の展開を問う。



鎌倉仏教 平岡聡著 KADOKAWA 1870円
鎌倉新仏教の祖師六人の「専修」とは細分化した末端なのではなく、多様な教えを一つの行に集約した「異端」の思想である―仏教学者で浄土宗僧侶の著者が祖師たちの思いを読み取る。



禅の思想 鈴木大拙著 岩波書店 1067円
禅を思想・行為・問答という三つの方向から解説。禅語録を引きつつ「無分別の分別」を明らかにする。世界で知られる仏教学者の73歳の著述で自ら会心の作と認めていた書の文庫化。



チベット仏教求法僧 能海寛と宇内一統宗教 浅川滋男編 同成社 4180円
能海寛は日本で初めてチベットに入った真宗大谷派僧侶。彼の生涯をたどると共に唯一の著作『世界に於ける仏教徒』を掲載し仏教研究の展開を探る。



瞑想でたどる仏教 蓑輪顕量著 NHK出版 1045円
NHKテレビ「こころの時代」4月から月1回放送シリーズのガイドブック。ブッダが取り組んだ心と身体の観察が受け継がれてきた歴史をたどると、仏教がどう発展してきたかが分かる。



法の水茎 和歌とおはなしでひもとく仏教 髙橋秀城著 武蔵野書院 3850円
詩歌や説話など古典文学を手がかりに仏教のおしえをひもとくエッセイ百話。八正道や十善戒といった教理を真言宗智山派住職が肩肘張らずに解説。季節感の豊かな話題も読みどころだ。



可睡斎物語 川口高風監修 羽衣出版 2000円
静岡県袋井市の曹洞宗寺院可睡斎の歴史を境内や文化財などのカラー写真とともに紹介。秋葉大権現の信仰でも知られる禅道場の多彩な魅力を伝える。



東アジアのなかの日本文化 村井章介著 北海道大学出版会 4180円
日本文化が周辺諸国との交流で形成されてきた実例を遣唐使の時代から近世の領土問題まで論じる。その背景には多くの僧侶がいた。とくに奝然の入宋と中世の禅僧来日に各1章を当てる。



人は死んだらどこへ行けばいいのか 現代の彼岸を歩く 佐藤弘夫著 興山舎 2420円
本誌好評連載が単行本になりました。列島の霊場を多数踏査してきた日本思想史の泰斗が昨今お墓を捨てる日本人が増えた謎に迫り、変転する「他界観の正体」を明らかにします。寺院住職の必読本。



日本の歴史的建造物 光井渉著 中央公論新社 990円
古い建物に価値を発見したのは近代のこと。法隆寺や平等院などを例に修理と復元の意味を考え、後半は城郭と近代建築の保存と活用を探る。新書判。



日蓮 佐藤賢一著 新潮社 1980円
日蓮聖人が立宗宣言し身延山に入るまでの半生を描いた歴史小説。日蓮遺文を使って史実に沿いながらも直木賞作家の想像力が祖師の物語を牽引する。



恋する日本史 『日本歴史』編集委員会編 吉川弘文館 2200円
日本史学者と国文学者が歴史上の恋愛エピソードを紹介。日本霊異記からは吉祥天女に恋した優婆塞が登場。LGBTQについて考える題材にもなる。



茶の湯のトリビア 中村幸著 淡交社 1320円
茶道具や菓子にまつわる雑学百話。茶道を習っている人も知らない蘊蓄が満載。仏教と縁が深い分野だけに禅語由来やインドに遡る説明も少なくない。



日本の装束解剖図鑑 八條忠基著 エクスナレッジ 1760円
天皇・貴族・武士と女性たちの正装から日常着までを時代ごとにカラーイラストで図解。僧衣の記述はないが伝統的な和装の決まり事と変遷が分かる。



難読漢字の奥義書 円満字二郎著 草思社 1650円
難しい読み方をする漢字約八百語を起源別に解説。荼毘や菩提ならお手のものだろうが、では売僧や雅典は? 成り立ちから覚えればもう戸惑わない。



決定版鳥獣戯画のすべて 上野憲示監修 宝島社 1760円
高山寺所蔵の国宝絵巻を全巻掲載し修復で判明した新事実を報告。東京国立博物館の特別展に合わせた一連の新刊の中でも大判で情報量が豊富な一冊。





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