[『月刊住職』 2021年4月号より転載]

上座部仏教における聖典論の研究 清水俊史著 大蔵出版 9900円
気鋭の仏教学者による上座部三蔵の形成過程などに関する論考。本書の刊行をめぐっては学術上の論争が不当な圧力へと進展し、版元が著者を擁護する異例の声明を公表して話題となった。



維摩経ファンタジー 西村惠信著 禅文化研究所 1430円
維摩居士が仏弟子や菩薩を論破する大乗経典の維摩経を現代語訳しながら解説。仏典として異色な奇想天外の物語を禅僧の著者はファンタジーと呼ぶ。



仏教福祉の考察と未来 長谷川匡俊著 国書刊行会 2640円
仏教の福祉的役割を考察する論文13本を収める。仏教福祉の特徴として死の迎え方と看取りにも焦点を当て、仏教の死生観を掘り下げる。浄土宗寺院住職でもある著者の研究の集大成。



『往生要集』入門 阿満利麿著 筑摩書房 1760円
平安中期に源信が地獄と極楽を対比して説いた著書の要所を詳述。法然と親鸞の教えを思索してきた著者が源流を辿って浄土仏教の構造を解き明かす。



親鸞聖人の自筆にふれる正信念佛偈 東本願寺出版 1100円
国宝『教行信証』坂東本から正信偈の全文をカラー掲載し親鸞自身の修正個所を注釈する。生々しい推敲の跡をたどると浄土教の核心が見えてくる。



思考禅のススメ 岡島秀隆著 北樹出版 1650円
坐るだけが禅ではないと、言葉の面から禅の魅力に迫る。紹介されるのは名僧の警句から絵本の一節まで幅広い。大学教授で曹洞宗住職でもある著者の柔軟な発想が禅に新たな風を吹き込む。



増補 仏典をよむ 末木文美士著 KADOKAWA 1232円
死を手がかりに古典の仏教文献を読み解く。遊行経、法華経、碧巌録、即身成仏義、正法眼蔵など十三編に「仏典をよむ視座」を追加し改版。文庫判。



人のために生きればいい 瀧口宥誠著 PHP研究所 1210円
善光寺大勧進貫主が親しみやすい口調で語る紙上説法。最澄の「己を忘れて他を利する」精神をふまえた人生論を展開。エピローグで半生を振り返る。



東日本大震災陸前高田五百羅漢の記録 星和書店 3080円
曹洞宗普門寺で石像五百体を彫った「未来への記憶」プロジェクトの活動の報告書。関係者らの総括に加えて約50人の遺族や一般参加者が寄稿。被災地の寺院の役割を示す貴重な出版だ。



許せないを気にしない。 名取芳彦著 佼成出版社 1650円
「下町和尚の生き方放言」と副題で謳う真言宗豊山派住職の小気味好いエッセイ。「心配は往復はがき。返信不要の心配りを」など六波羅蜜をベースとして心穏やかに過ごすコツを伝授する。



安全運転寿命を延ばすレッスン 松田秀士著 小学館 1540円
レーサーにして自動車評論家で本願寺派僧侶の著者が高齢者のカーライフの心得を説く。目指すは俯瞰的な「仏の目」。手軽にできるトレーニングを写真で紹介。自動運転の未来にもふれる。



ブッダ 繊細な人の不安がおだやかに消える100の言葉 宝島社 1320円
生きづらい世の中で悩み苦しむ人たちを励ます釈尊の金言を原始仏典から百句選び出し、簡潔な解説と仏教国の写真を添えて掲載。佐々木閑訳・監修。



インド人の論理学 桂紹隆著 法藏館 1430円
インドの古典文献からその思考法を分析、ギリシャ哲学の演繹法に対してインド人は帰納法を用いると看破。遡ればブッダの教説に行き着く。文庫判。



ヒンドゥー教10講 赤松明彦著 岩波書店 990円
ヒンドゥー教の歴史や神々、ヨーガや帰依など信仰の特徴をテーマごとに丁寧に講義。同じインドで生まれた仏教と似て非なる点が興味深い。新書判。



東大寺の考古学 鶴見泰寿著 吉川弘文館 1870円
東大寺に今ある諸堂は創建当時のままではない。発掘調査で判明した遺構に文献資料を重ね合わせて紹介。七重塔が建つ天平伽藍が眼前に姿を見せる。



よみがえる白鳳の美 朝日新聞出版 2970円
薬師寺東塔の解体修理中に判明した知見を建築史・年代学・美術史・考古学・歴史材料科学など専門分野の研究者が解説。貴重なカラー写真多数掲載。



永訣 あの日のわたしへ手紙をつづる 金菱清編 新曜社 2420円
東日本大震災の被災者31人が10年前の自分に宛てた手紙を収録。今も行方不明者を探す家族たちの時を経ても容易には癒えない思いが交錯する。



ニューエクスプレスプラスサンスクリット語 石井裕著 白水社 3520円
サンスクリット語の日常会話を習う画期的な入門書。デーヴァナーガリー文字で掲載された例文は挨拶で始まる身近な設定。現地収録音声のCD付き。





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