[『月刊住職』 2019年1月号より転載]

金光明経の研究 日野慧運著 山喜房佛書林 8000円
大乗経典の『金光明経』は、日本では護国三部経の一つとされ、正月に宮中の御斎会などで読誦・講説された。梵・蔵・漢本の発展過程からインド語原典の成立過程を解明する研究論考。



日本古代仏教の福祉思想と実践 宮城洋一郎著 岩田書院 2800円
日本に仏教が定着する過程において、独自の福祉思想が醸成された。聖徳太子の十七条憲法、行基集団における女性参加、光明皇后の救済事業、最澄や空海の思想から歴史が読み解かれる。



道元伝 圭室諦成著 書肆心水 6900円
道元はなぜ顕密諸宗を見限り、浄土門に与することなく、坐禅の道を歩んだのか。道元の著作を引用しながら、仏教思想史・仏教社会史の中に道元を位置付けた古典的入門伝記の合冊版。



大拙 安藤礼二著 講談社 2700円
宗教における霊性を究め、アメリカにも大乗仏教と禅思想を広く知らしめた仏教哲学者、鈴木大拙。その思索の跡を辿り、巨人の思想の全体像に迫る。



《唯識》で出会う未知の自分 横山紘一著 幻冬舎 780円
唯識を学ぶとすべてのものをありのままに受け止めることができると著者は説く。プラトン、ニーチェ、老子などの言葉を引用しながら、唯識の特徴を高校生向けに説いた講義録の再編集。



浄土思想入門 平岡聡著 KADOKAWA 1700円
念仏ひとつで善人悪人等しく極楽浄土に往生すると説く浄土教は、いかに生まれたのか。死を隠蔽し、自我の肥大に苦悩する現代社会において、浄土思想の意味を仏教史から問い直す論考。



カミとホトケの幕末維新 岩田真美他編 法藏館 2000円
幕末維新は江戸時代との断絶ではなく、近世から流れる思想・宗教にかかわる文化的水脈があった。気鋭の若手研究者を中心に、神仏分離、廃仏毀釈などのキーワードから捉える近世史論。



続・仏教なんでも相談室 鈴木永城著 大法輪閣 1600円
「あなたの疑問に答える」が副題。超宗派で支える仏教テレフォン相談に長年かかわってきた曹洞宗僧侶が、悩み相談から仏事の質問までを答える。「老人ホームに入ったことを後悔」他。



さよなら、仏教 髙橋卓志著 亜紀書房 1600円
副題は「タテマエの僧衣を脱ぎ去って」。寂れた地元の温泉街を、ケアタウンとしてよみがえらせた長野県の臨済宗妙心寺派住職が、自ら実践してきた生老病死を支えるケアと自坊退山の記。



人口減少寺院の底力 桜井邦彦著 興山舎 2000円
過疎、限界集落、大都市の百カ寺余の取材から見えたのは、人口減少社会を克服するお寺の営みだった。本誌に連載された中国新聞社記者のルポの単行本化。



一隅を照らす 荒了寛著 里文出版 1800円
90歳を迎えた天台宗米国ハワイ開教総長が、自作の羅漢さんの絵と共に伝教大師の教えを説く、全十巻「羅漢さんの絵説法シリーズ」の完結編。



からだ、こころ、いのち 玄侑宗久他著 金剛出版 2400円
催眠療法と自律訓練法の探求から、心を解き放つ「動作法」の確立に至った臨床心理学の第一人者、成瀬悟策博士と、臨済宗僧侶が身心と命を語る。



超訳 こころの禅語 村越英裕著 佼成出版社 1500円
仕事に行きたくない、子育てに行き詰まっている等、生きる上での悩みに本誌別冊連載の臨済宗妙心寺派住職が禅語を通じて、その向き合い方を説く。



グローバル時代の宗教と情報 保坂俊司著 北樹出版 2200円
グローバル化が進む今、正確な宗教理解は欠かせない。文明の祖型としての宗教という観点から宗教学者が解説。「インド哲学と経済学の出会い」他。



北の白山信仰 前田速夫著 河出書房新社 2100円
「もう一つの『海上の道』」が副題。白山信仰が東北に浸透していったのはなぜか。アイヌや北方狩猟民族、シャーマニズムなど民俗学の視点から考察。



チベット仏教入門 吉村均著 筑摩書房 900円
チベット仏教が今日、世界的に注目されるのはその生と死の教えにあるという。チベット仏教の正統的な教えについて歴史、実践を解説した入門書。



奉納百景 小嶋独観著 駒草出版 1500円
刀を捧げて咳止め祈願、亡き子のための冥婚絵巻、縁切り絵馬、朱塗りの猿など日本各地の寺社に伝わる不思議な呪物と祈願法を写真と共に紹介。





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