[月刊『寺門興隆』 2012年1月号より転載]
肉食妻帯考 日本仏教の発生 中村生雄著 青土社 2400円
なぜ日本の僧侶は肉食妻帯が当たり前になったのだろう。国家と仏教教団、日本人の宗教意識、民俗学など広い視野から論じた故・比較宗教学者の研究論文集。「肉食妻帯と近代仏教」他。
日本仏教の可能性 末木文美士著 新潮社 490円
「現代思想としての冒険」が副題。仏教はいま人々にどのような道を示せるのか。近代化における問題点、死者とのかかわり、禅の可能性、倫理問題など多様な視点から論じる。文庫判。
日本の「宗教」はどこへいくのか 山折哲雄著 角川学芸出版 1500円
日本の宗教はどこから来てどこへゆくのか。法然・親鸞・道元・日蓮など心の探求としての宗教と、祖霊信仰などの習俗という二つの精神的な系譜を見直し、今後の宗教の行く末を考える。
利他主義と宗教 稲葉圭信著 弘文堂 1700円
いま宗教は社会にいかなる役割を果たせるのか。他者を思いやる利他的行為と宗教が説く人助けの教えに着目し、新たな社会構築の展望を描く。本誌平成二十三年7月号掲載文も収載。
仏はどこにいるのかマンダラと浄土 立川武蔵著 せりか書房 2400円
ブッダは歴史の中で救済者、阿弥陀、大日如来と姿を変えた。マンダラから、時代ごとの仏教の捉え方と精神性を考察。「インド精神史の時代区分」他。
読んで深まる、書いて堪能する『般若理趣経』 PHP研究所 1500円
著者は曼荼羅など宗教図像学の研究で知られる宗教学者の正木晃。空海が持ち帰った経典『般若理趣経』は真言密教の根本とされる。お経に込められた密教の世界を分かりやすく解説する。
お地蔵さんの世界 渡浩一著 慶友社 2600円
副題は「救いの説話・歴史・民俗」。なぜ日本には、集落の入り口、街中、公園と津々浦々に地蔵が祀られているのか。地蔵の誕生と受容の歴史を仏教説話や伝説の資料をもとに解き明かす。
今を生きる親鸞 安冨歩・本多雅人著 樹心社 1800円
福島第一原発事故後をどう生きるかが等しく問われている。人間の持つ闇を見つめ「愚」に立ち続けた親鸞に今こそ学ぼうと、経済学者と真宗大谷派住職が対談。「依存からの脱却」など。
福島に生きる 玄侑宗久著 双葉社 800円
いま福島で何が起きているのか。福島第一原発から四十五㌔の三春町にある臨済宗妙心寺派福聚寺の住職で東日本大震災復興構想会議委員を務めた著者が震災後の福島県の実情を訴える。
仏陀の足跡を逐って R・グルッセ著 濱田泰三訳 興山舎 3800円
北インドに興った仏教が、なぜ世界宗教にまでなり得たのか。玄奘や義浄の歩みを辿り、二十世紀最高のフランスの文明史家がその本質と営みを捉えた名著の新装。
信ずるとは何か 橋本凝胤著 芸術新聞社 2400円
南都仏教・唯識教学の正統を継承し薬師寺長老として活躍した名僧による講話と論考集。徳川夢声との天動・地動説論争、高田好胤との対談も収める。
禅 壁を破る智慧 有馬賴底著 朝日新聞出版 720円
逆境の時にこそ人は磨かれる。臨済宗相国寺派管長が禅の視点から不安を切り抜ける思考と視点を説く。「『転じる力』で切り抜ける」他。新書判。
人生に活かす禅 小林義功著 致知出版社 1800円
自己探求のため臨済宗の僧堂に七年半、高野山真言宗寺院に五年いたのち、全国行脚を行った僧侶が、公案集『無門関』を自らの体験を通じて説く。
重源と栄西 久野修義著 山川出版社 800円
東大寺再建に活躍した重源と、臨済禅と茶の祖である栄西は、実践的社会事業家で宗教者だった。二人の生き方から、社会に果たした役割を考察する。
寄り添いの死生学 ジョナサン・ワッツ他編 浄土宗出版 1500円
「外国人が語る〝浄土.の魅力」が副題。浄土宗総合研究所内の往生と死プロジェクトチームが浄土教と仏教の現代的意義を問う研究成果と講演集。
海外版 百寺巡礼 ブータン 五木寛之著 講談社 448円
世界一幸せな国といわれるブータン王国は、敬虔な仏教国でもある。作家が同国を訪ね、寺院や日常生活に見られる人々の祈りの世界を綴る。文庫判。
両界曼荼羅 石元泰博著・真鍋俊照解説 平凡社 22000円
京都・東寺が所蔵する国宝・伝真言院両界曼荼羅は現存する日本最古の彩色曼荼羅。その美と造形を、米国生まれの文化功労賞の写真家石元が活写。
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