[月刊『寺門興隆』 2009年12月号より転載]

中國古典社會における佛教の諸相 西脇常記著 知泉書館 9975円
中国古典社会における仏教受容の過程と儒教との関連を、宋代の天台宗史記録『釋門正統』ならびに、仏教徒の墓誌や遺言から考察した研究書。中央アジア出土の文書研究の状況も紹介。



若き空海の実像 飯島太千雄著 大法輪閣 3570円
副題は「『聾瞽指帰』と新資料『破体千字文』で解明する」。名筆で知られる空海が二十四歳の時に著した出家宣言と十八歳頃の書から青年時代の実像に迫る。「書法から見えるもの」他。



日本人の他界観の構造 大東俊一著 彩流社 1995円
人は死んだらどこにいくのか。日本人が形成してきた独自のあの世観を、『万葉集』『日本書紀』といった文献や来迎図などの宗教絵画、現代に残る習俗・行事までを視野に入れて論じる。



六道銭の考古学 谷川章雄他編 高志書院 6300円
埋葬時に六道銭を入れるのはなぜか。六道銭から当時の貨幣経済の展開を読み解いた先行研究を問い直し、考古学的な意味合いからその性格を捉える論文集。「六道銭の展開と変質」など。



一遍聖絵と時衆 砂川博編 岩田書院 6195円
戦後の時衆研究を引っ張ってきた金井清光氏の遺稿を収めた追悼論文集。『一遍聖絵』の読み解きから、教団論、不浄観、戦争との関わりなど多様な視点から時衆の全体像を明らかにする。



コールマイネーム 葉祥明著・絵 角川学芸出版 1500円
『阿弥陀経』の世界を日本語と英語の併記による詩と美しいイラストであらわした絵本。法然上人八百年大遠忌記念事業の一環で浄土宗の企画による。



親鸞聖人 千葉乘隆・徳永道雄著 本願寺出版社 1050円
副題は「その教えと生涯に学ぶ」。親鸞は何を説き、いかに生きたのか。龍谷大学元学長と本願寺勧学が現代の浄土真宗の問題点もふまえて解き明かす。



安穏の思想史 親鸞・救済への希求 市川浩史著 法藏館 3990円
戦乱と混迷の中世社会において宗教者は現世にいかなる「安穏」を願い、描いたのか。親鸞や日蓮の説いた安穏をキーワードに、その思想史を辿る。



栄西 宮脇隆平著 禅文化研究所 1365円
天台宗の学僧だった栄西が、なぜ二度の宋留学を経て日本に禅と茶をもたらすことになったのか。『元亨釈書』他、多くの史料に基づく伝記。巻末に年表。



ヒンドゥー教と仏教 M・ウェーバー著、古在由重訳 大月書店 8925円
宗教社会学者の名著がまとめられた宗教社会学論集の第二巻。ヒンドゥー教と仏教の違いを、それぞれを信仰する社会体制に着目して比較した研究。「古仏教の転化の一般的証拠」など。



チベットの仏たち 田中公明著 方丈堂出版 2940円
チベット密教の豊饒たる宇宙を作る仏たち。釈迦・大日如来から護法尊にまつわる六十五話を、その起源と共に専門家が挿図百点を使って解説する。



公案 秋月龍眠著 筑摩書房 1470円
公案とは禅の修行者の心根を練磨するために課せられる一種の試験問題である、と著者は説く。参禅の方法、公案の解説を付した禅入門書。文庫判。



鎌倉仏教 田中久男著 講談社 924円
日本仏教史において鎌倉時代ほど、新宗派が勃興した時期はなかった。貴族から庶民へと仏教の受容層が拡大した過程が端的に描かれる。文庫判。



石にやどるもの 甲斐の石神と石仏 中沢厚著 平凡社 3360円
かつて人々は路傍に様々な神仏を安置し、願いをかけた。山梨県下に残る道祖神や馬頭観音、荒神、性の石神などから、石仏信仰とその文化を探る。



寧波の美術と海域交流 中国書店 3360円
中国の寧波は、かつて五山禅林を擁する仏教文化の聖地だった。日本仏教にも影響を与えた都市を、仏教美術や墓など様々な視点から論じた九州国立博物館のシンポジウムの報告記録。



アジアの仏像と法具がわかる本 アルマット 1575円
編者はネパール手工芸協会。チベット密教・ヒンドゥー教の礼拝、瞑想に使う密教法具がカラー写真と共に紹介される。「瞑想法と法具の使い方」他。



ダライラマの外交官ドルジーエフ 棚瀬慈郎著 岩波書店 2310円
「チベット仏教世界の20世紀」が副題。十九世紀末から二十世紀初頭、周辺列強諸国の覇権争いのただ中にあったチベットでダライラマ十三世の側近として活躍した外交官の生涯を描く。



宗教論 ニクラス・ルーマン著 法政大学出版局 1890円
副題は「現代社会における宗教の可能性」。社会システム理論の構築で知られるドイツの社会学者が、現代における神話の必要性の有無などを論じる。





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