[月刊『寺門興隆』 2013年2月号より転載]

『一切悪趣清浄儀軌』の研究 中島小乃美著 起心書房 9800円
密教における生死と救済とは何か。インド・チベット密教の葬送儀礼の基本『一切悪趣清浄儀軌』の全容を瑜伽部密教の三大学匠の一人、ブッダグヒヤの註釈を中心に明らかにした研究書。



徹底検証 一遍聖絵 砂川博著 岩田書院 24800円
永年、時宗研究に携わってきた著者による国宝「一遍聖絵」の研究成果がまとめられた。国文学から美術史学、民俗学までに及ぶ広範囲の識見を駆使して全章全段の詞と絵を検証している。



〈災害社会〉東国農民と親鸞浄土教 亀山純生著 農林統計出版 4000円
天変地異が頻発した中世社会、新たな救済思想はいかに生まれたのか。親鸞の見た象徴的な六つの夢を基軸として、当時の歴史を振り返りながら、独自の思想が生まれた背景を論じている。



禅宗の歴史 今枝愛真著 吉川弘文館 2600円
中国から日本に伝来した禅宗思想は鎌倉・室町時代以降、政治や文化に大きな影響を与えた。時代ごとの展開や系譜、特徴が読み解かれる。「曹洞教団の地方発展」「妙心寺派の胎動」など。



ブッダと龍樹の論理学 縁起と中道 石飛道子著 サンガ 1500円
インドの著名な論理学者である龍樹はブッダ論理学の発見者でもあった。ブッダの『阿含経典』をもとに龍樹の『中論』の解明を試みている。文庫判。



空海と密教美術 正木晃著 角川学芸出版 1700円
なぜ密教は曼荼羅や、古代武器を由来とする法具を必要とするのか。曼荼羅の図像学研究者が密教美術を分析し、空海の思想を解き明かした密教入門書。「曼荼羅の二つのつかい方」など。



空海と日本思想 篠原資明著 岩波書店 760円
西洋思想にプラトンが影響を与えているように、日本思想を理解するためには空海の「風雅・成仏・政治」が基本視点になると著者は主張。新書判。



仏教は世界を救うか 地湧社 2400円
仏法は真理か、社会に有用か、などが論じられたシンポジウム記録。発言者は高野山大学准教授の井上ウィマラ、曹洞宗僧侶の藤田一照、シュタイナー研究家の西川隆範。司会は鎌田東二。



掌を合わせて生きる 在家仏教協会 1500円
月刊『在家佛教』に掲載された対談集(中村元、中村富子、上田閑照、南直哉他)が一冊にまとめられた。講演集録『悲喜をよろこぶ』も同時刊行。



アジアの宗教とソーシャル・キャピタル 明石書店 2500円
信頼関係などに基づく社会組織の重要性を説くソーシャル・キャピタルと宗教の関連に着目した全四巻シリーズの第一巻。櫻井義秀、濱田陽編著。



禅から学ぶこころの引き算 村越英裕著 同文舘出版 1300円
本誌別冊連載の静岡県・臨済宗妙心寺派龍雲寺住職が様々なお悩み解決の手立てに禅的思考を提案する法話集。「心はまるごと『引き算』できる」他。



動じない心 宮城泰年著 講談社 1500円
副題は「『曇り』を磨き、『心』を鍛える、『山伏』力」。元新聞記者の京都・本山修験宗総本山聖護院門主が修験道の魅力と教え、実践をまとめた入門書。



現代宗教とスピリチュアリティ 島薗進著 弘文堂 1200円
社会が個人化するなかで、精神世界が注目されつつある。東日本大震災後の宗教の行方を、宗教学者が論じている。「伝統宗教の後退と世俗化論」他。



聖徳太子 日本人のこころの言葉 高田良信著 創元社 1200円
著者は奈良・聖徳宗総本山法隆寺の長老。仏教の精神をもって国の礎を作ろうとした聖徳太子の言葉とその生涯を紹介している。「仏教に生きる」他。



宗教のレトリック 中村圭志著 トランスビュー 2000円
どんな宗教でも、開祖の呼び名やたとえ話、物語など言葉の技法(レトリック)に着目することで本質や構造が分かるというユニークな宗教入門論。



蛇と女と鐘 福井栄一著 技報堂出版 2200円
著者は上方文化評論家。お寺の鐘をめぐる伝説を見ると、思わぬ共通点が浮き上がるという。梵鐘と日本文化の関係を物語の視点から読み解く文化論。



粥百選 高梨尚之・翠香園著 東京書籍 1600円
精進料理布教に力を入れる群馬県の曹洞宗永福寺住職と、横浜の中華街名店による、精進料理粥五十品、中華粥五十品、お粥に合うおかずのレシピ集。



大学のカルト対策 櫻井義秀・大畑昇編著 北海道大学出版会 2400円
キャンパスで勧誘を行うカルト教団の被害者が後を絶たない。宗教学者や大学関係者などが勧誘の実態と手口を明らかにし、その対応策を論じている。





Copyright (C) 2006-2013 kohzansha. All Rights Reserved.