[月刊『寺門興隆』 2009年6月号より転載]

仏典をよむ 末木文美士著 新潮社 1890円
「死からはじまる仏教史」が副題。仏教は大陸伝来の途上で何度もダイナミックな変容を遂げてきた。インド・中国・日本の主要仏典を通じて、現代に続く人間の精神の遍歴が明かされる。



唯識でよむ般若心経 空の実践 横山紘一著 大法輪閣 2835円
この宇宙のすべては自分の心が生み出したものである、と説く唯識思想。唯識研究の第一人者が心の視点から空の思想を明らかにする。奈良・興福寺で開催された佛教文化講座の書籍化。



入門 哲学としての仏教 竹村牧男著 講談社 777円
仏教は斬新な哲学である、と著者は主張する。二千年にわたって鍛え抜かれた人間存在に関わる知の体系を分かりやすく解説した仏教入門書。新書判。



高校生からの仏教入門 小池秀章著 本願寺出版社 1050円
「釈尊から親鸞聖人へ」がサブタイトル。私とは何か、宗教とは何か。人生の入り口に立った高校生向けに、浄土真宗の視点から編まれた仏教入門書。



日中を結んだ仏教僧 頼富本宏著 農山漁村文化協会 3200円
奈良時代から平安時代にかけて日中交流の中心となったのが、名も知れぬ両国の僧侶だった。空海前後の入唐僧の歴史的意義を種智院大学学長が考察。



山をおりた親鸞 都をすてた道元 松尾剛次著 法藏館 2310円
出家が遁世と理解された中世に、親鸞や道元はあえて俗世にまみえることを選んだのはなぜか。宗教社会学者が当時の都市構造をふまえ逆説的遁世観を軸にして新たな中世仏教史を描く。



能邨英士選集 よきひとのおおせをかぶりて 白澤社 2310円
真宗大谷派の同朋会運動を推進し、長年続いた東本願寺紛争の解決和解にも奔走、教団内の女性室開設にも踏み切った元宗務総長(昨年五月に七十六歳で遷化)の法話・演説等を収集。



白隠禅師物語 上村貞嘉著 淡交社 1575円
日本臨済禅の中興の租、白隠禅師は今なお多くのファンを持つ。五百年不出の高僧と呼ばれたその生涯と思想、修行法を臨済宗妙心寺派僧侶が辿る。



ぼくが宗教を読み解くための12のヒント 亜紀書房 1575円
 著者は本誌連載中の宗教学者、島田裕巳氏。創価学会を筆頭に氏の数多の新宗教研究はいかに行われたか。教団や教義の見方のポイントが明かされる。



タイを揺るがした護符信仰 P・ヌンスック著 第一書房 3150円
近年、タイの新聞広告にお守りのPRが増えている。チャトゥカームラーマテープがそれでタイ社会に大流行という。この新たな護符信仰の起源とその背景を民俗学的アプローチから考察。



人はなぜ「新宗教」に魅かれるのか? 井上順孝著 三笠書房 1680円
身近に新宗教信者は多いが、その信仰動機や実態を知ることは少ない。宗教学者が勧誘の手法から入信後の変化、教団の活動や資金までを明らかにする。「信者を引きつける教祖の魅力」他。



癒しと鎮めと日本の宗教 保坂俊司著 北樹出版 2415円
日本人の宗教に対する抵抗感は捏造されたものだった? 宗教学の研究者が仏教史を中心に読み解く。「救いの日本展開」「仏教的救済構造の崩壊」他。



信仰のなかの動物たち 中村生雄・三浦佑之他編 吉川弘文館 2940円
馬頭観音など信仰の対象のモチーフに動物が使われることは多い。こうした日本人の動物に対する眼差しはいかに変化したか。信仰観が検証される。



心を楽にするお寺入門 井上暉堂著 ポプラ社 1260円
副題は「プチ修行の楽しみ方」。悩んだらお寺に行ってみては? と気軽に誘うお寺入門ガイド。お参りの正しい作法や祈願の仕方などを易しく説く。



歴史のなかの宗教心理学 堀江宗正著 岩波書店 7875円
副題は「その思想形成と布置」。現代の精神療法のベースでもある心理学の領域に宗教は、いかに位置づけられているのか。欧米の心理学研究の分析と歴史を通じて検証した研究論考。



国宝 熊野御幸記 三井記念美術館他編 八木書店 8925円
『熊野御幸記』とは後鳥羽上皇の熊野参詣を藤原定家が記したもの。本書は原本を写真掲載の他、翻刻・訓読・現代語訳・註釈を付け現代人向けに編纂。関係論文や同時代の参詣記も収載。



ダライ・ラマ 未来への希望 大蔵出版 一九九五円
一昨年に日本各地で催された、ダライ・ラマ十四世の基調講演がまとめられた。争いを解決する中道の思想が説かれている。マリア・リンチェン訳。



名文で巡る阿修羅 梅原猛・亀井勝一郎他著 青草書房 1890円
東京国立博物館で開催中の阿修羅展は連日、超満員。時空を超えて人を惹きつける阿修羅の魅力を描き出した僧侶や作家の名文が一冊にまとめられた。





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